柴田ジュン (鎌倉) Go to Jun Shibata's Fighting Alone Performance

1. ナウル共和国パビリオン


1. ナウル共和国パビリオン




ナウル共和国は、太平洋のちょうど赤道の南に位置する小さな島国です。その島国が、アメリカの工作によって世界地図から消されようとしています。

楕円形の島は珊瑚礁に囲まれており、その面積は21.2sqkm。人口約1万2千人のうち、58%がナウル人(ポリネシア人、ミクロネシア人、メラネシア人を起源とする人たちの混血)、26%が太平洋人(Pacific Islander)、8%の中国人と8%のヨーロッパ人で構成されていました。また人口の8割がクリスチャンで、ナウル語と英語が島の公用語でした。

ナウルの島はアホウドリの排泄物の堆積から発生しており、上質のリンを含んでいました。1980年代半ばには、約160万平方メートルのリンがオーストラリア、ニュージーランド、フィリピン、韓国、日本に肥料として輸出されており、国民の平均年収は500万円にまで上昇し、世界で尤も一人当たりの収入の高い国の一つとなります。また実際の労働は外国からの労働者によって成立しており、島民は鉱山による収入を配分されていたので、職業は公務員か無職がほとんどという国でした。つまり、真面目に働いているナウル人はほとんどおらず、みな贅沢な暮らしをしていたのですが、このリン鉱山が1999年あたりで枯渇するという困難な状況に直面します。

国からの配当がなくなった国民達は、新しい収入を得る為に産業育成をするのですが、そこで国をあげて新しい産業として取り組んだのが「金融」でした。 しかし、全くの素人集団がやろうとした金融業は大変危険なもので、結局はロシアマフィアやテロリスト達のマネーロンダリングに利用され、また見通しが甘かった故、国は事実上の破産にまで追い込まれていきます。さらに国はお金を払えばほぼ無審査でパスポートを交付していたのですが、これがテロリスト達に利用され、アメリカなどで捕まるテロリストのほとんどがこのナウル共和国のパスポートという結果を招きます。

さらにオーストラリアはアフガニスタンからの難民を、借金の肩代りにナウル共和国に押し付けるなど、まさにやりたい放題。小さな島が難民で溢れかえってしまったのです。

問題はここからです。アメリカはイラクを攻略する前にテロリストのお金を止めて活動に制限を与えるという裏の戦略ありました。 まずFBI(CIA説がありましたが実際にはFBIが工作をしたそうです)が2003年の初め頃からナウル共和国の電話回線を破壊。また船舶、航空などの交通手段を全て破壊または借金などの理由で差し押さえました。 このことによりナウル共和国は2003年の1月初旬から数ヶ月にわたり完全な孤島となり、一切の連絡が途絶えたのです。丁度その頃オーストラリアの電話会社が電話網の修理の為にナウルに向かったのですが、衛星電話をもっているのにも関わらず、その後連絡がとれなくなっています。 さらに時を同じくしてナウル共和国大統領が心臓病の治療の為にアメリカに亡命するのですが、2月頃には突然死亡。国家元首すら消えてしまったのです。

 島国で食料の大半を輸入にたよっていた国であるナウルはどうなったかというと、未確認情報ですが、大統領官邸が焼き払われたとか、難民達が暴動を起こすなどの地獄絵図が展開していた模様です。最新情報によると、驚くべきことに国としては解体され、島民は全員追放。島は米軍基地になる予定と言います。 つまり、イラク戦争が始まる前に、もうナウルにおいて戦争は始まっていたのです。

 


ナウル島爆撃と原住民による不発弾の処理風景

ナウル共和国パビリオンは、ナウルから連想されられる、21世紀に表面化した情報化社会の欠陥を鋭く突いた、柴田ジュンによるオリジナル・パビリオンです。作品はナウル共和国における出来事のジャーナリスティックな面に留まらず、目に見えない圧倒的なものに対するアーティスト本人の反応へと多面的に展開して行きます。


(C) Copyright Shinya Watanabe

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