ベアテ・シロタ・ゴードンさんロングインタビュー公開に寄せて
渡辺真也
このインタビューは2007年4月25日、アトミックサンシャイン展のプラットフォームイベントとしてニューヨークのアジアソサエティにて開催された、憲法第九条を巡るシンポジウム開催直後に取られたものです。GENERATION TIMES編集長の伊藤剛さんを中心に、ベアテさんの自宅にて五時間に渡り録音されたものですが、去る2012年12月30日、ベアテさんがお亡くなりになった今、歴史的資料となってしまいました。
ベアテさんがお亡くなりになった直後、このWebサイトに掲載されていたベアテさんの写真を見つけた海外誌から私宛てに写真使用許可の連絡があり、遺族の許可を取った上でデータを送るなど、その対応に追われました。その際私は、ベアテさんご自身から、重要な写真データを全て保存して欲しいと依頼を受け、彼女と一緒になってキャプションを付けたことを思い出しました。自分の死期がそう遠くないことに気付いていたベアテさんは、できるだけ多くの記録を残そう、そして憲法第九条の持つ意味を後世に伝えよう、と最後まで必死でした。
このインタビューをした当時、伊藤さんは31歳、私もまだ27歳でしたが、あれから6年以上が経過した今読み返してみると、私達の未熟度もさることながら、これほど充実したベアテさんのインタビューは類を見ないのではないか、これは歴史記録として後世に残す必要がある、そしてこれを公開するのであれば、憲法改正が現実味を帯びている今ではないか、と考えるに至りました。
そこで今回、ベアテさんロングインタビューをテープ起こしした全文と、そのMP3音源、さらにアジアソサエティでのプラットフォーム(シンポジウム)の全文を収めたPDF、当時ベアテさんにインタビューした伊藤剛さんが展示カタログへと寄せてくれた文章を掲載したいと思います。
またベアテさんに関連する写真は、ご遺族の方からも許可を頂き、ベアテさんが付けたキャプションのまま、高解像度で掲載します。日本国憲法に関する研究や出版物などの教育上の理由で必要な方は、ぜひダウンロードの上ご使用下さい。
私がアトミックサンシャイン展を作るきっかけになったのは、第一次安倍政権が憲法改正を公約に掲げ、世論調査の改憲派が護憲派を上回った時でした。戦争の記憶が風化しつつあり、憲法改正の足音が聞こえて来ている今、ベアテさんの声に、耳を澄ましてみませんか。これを読んで下さった日本国の主権者である皆さん一人一人が、日本国憲法について考える機会となれば幸いです。