ユーラシア大陸に位置する13の国(ドイツ - ポーランド - ウクライナ - グルジア - アゼルバイジャン - カザフスタン - ウズベキスタン - キルギス - ロシア - モンゴル - 中国 - 韓国 - 日本)を陸路で横断する様子を記録したこの映画は、12章から構成されています。ヨーロッパとアジアを一つの大陸文化EUR=ASIAとして接続することを試みるこの映画の脚本を、私はアジアの仏教における「十二縁起」の輪廻転生する魂(Soul)と、西洋(ヨーロッパ)の神話学者ジョーセフ・キャンベルが唱えた「英雄の旅」12章の旅(Odyssey)の概念に重ね合わせる形で書き上げました。
これらの12章を繋げる鍵となるのが、ドイツのクレーフェ(第1章:前世)、ロシアのイルクーツク(第8章:現世)、日本の静岡(第12章:来世)に登場する、ユーラシア大陸全土に広がり、輪廻転生を象徴する白鳥伝説です。「英雄の旅」最終章の12章を出発点に円環させる構造を取ることで、「英雄の旅」12章を仏教の「十二縁起」と一致させます。英雄の旅は私たちの生涯となり、私たちの生涯は、終わりの無い転生の旅となります。
また映画全体を通じて、道中にて私が出会った人々に最大限フォーカスすることにより、彼らに物語を語らせています。そうすることで鑑賞者はあたかも私の視点で旅行しているかの様に感じ、映画の中でユーラシア大陸全土の人々と出会うことになります。ヨーロッパからアジアへの文化の移り変わりを徐々に描くことで、鑑賞者にヨーロッパとアジアを隔てる境界線が無いこと、またそういった境界線は私たちの心の中にしか存在しないことを伝えようと試みました。
私はこの映画を、あなた自身の映画を作りなさい、と励ましてくれた故クリス・マルケル監督に捧げます。マルケル監督が自身の出生場所だと主張していたモンゴルのウランバートルでは、シャーマンを通じてマルケル監督との交信を試み、彼の映画『レベル・ファイブ』の背後にある秘密を解き明かしていきます。
芸術を、そして魂の不滅を信じる全ての人に、ぜひ見て頂きたい映画です。