沖縄巡回展に寄せて
渡辺真也(当展示キュレーター)
「俺、沖縄が好きです」
そう言った私に対して、沖縄出身の友人はこう言った。
「僕があと10歳若かったら、君をこの場で殴っていたよ」
そして彼は、私がいかに沖縄のことを知らずに沖縄を好き、と言っているのか、力説してくれた。
そして私は、沖縄を好きだ、と言ってくれる人に対して、その返答は失礼ではないか、と答え、話は平行線をたどった。
このやりとりを通じて、私が理解できたのはひとつだけ。
── 私は沖縄を知らない ──
沖縄を知らない私が、沖縄で一体何ができるのだろうか?
第2次大戦中、地上戦により一般市民の多くが犠牲となった沖縄。
戦争体験、さらに27年間の米軍支配を経験し、住民の多くが強く平和を希求するこの地、沖縄。
この沖縄という場所に生まれたアーティストたちは、「戦後」と呼ばれる時代に、9条という理想、そして沖縄の帰属やアイデンティティというテーマのもとで、どんな表現を行ってきたのだろうか。
今回の沖縄県立美術館への巡回展では、「アトミックサンシャインの中へ in 沖縄」と題し、ニューヨーク・東京展での作品に加え、沖縄における戦後の美術作品を加えた。
私は、これらの戦後の美術作品とその表現を提示することが、9条と戦後美術というテーマを、沖縄県民、そして日本国民、さらに世界の人達と共有し、さらに再考する機会となり、来るべき未来を準備する契機となれば、と願う。