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サテライト展「アトミックサンシャインの中へ in 佐喜眞」に寄せて

渡辺真也(当展示キュレーター)

 沖縄県立美術館にて開かれる「アトミックサンシャインの中へ in 沖縄」展に合わせ、佐喜眞美術館にてサテライト展「アトミックサンシャインの中へ in 佐喜眞」を開催します。

 沖縄初の私立美術館である佐喜眞美術館は、佐喜眞道夫館長が、『「原爆の図」で有名な丸木位里・丸木俊が描いた「沖縄戦の図」(4m×8.5m)を展示するために作った』美術館です。土地の所有者である佐喜眞道夫氏は、粘り強い交渉の末、米軍との契約期限が切れる1992年、別に所有する軍用地の再契約と引き替えに普天間基地の一部を返還させ、1994年に美術館をオープンしました。

 丘の上に位置するこの美術館のデザインは、庭園にある270年の歴史を持つ佐喜眞家の亀甲墓と統一感を持たせたものであり、屋上へと続く階段からは、普天間基地を見降ろすことができます。

 アーティストの山城知佳子は2004年、ビデオ3部作「オキナワTOURIST」の1つ、「墓庭エイサー」を、この佐喜眞美術館の亀甲墓の前で制作しました(他の2本はアトミックサンシャイン本展にて上映予定)。沖縄に生まれた作家として、何を表現すべきなのか、という問いの下、沖縄にて作品を制作、発表し続けてきた山城は、当展示にて、戦争を体験していない私たちは、本当にその体験を継承することが可能か、自らの身体表現を通じて結実させた写真作品 「バーチャル継承」、さらに新作ビデオ作品を発表します。

 また、アトミックサンシャイン展の出品作家である、プエルトリコ在住のアメリカ人とキューバ人アーティストのデュオであるアローラ&カルサディーラは、プエルトリコのビエケス島をテーマとしたビデオ作品を展示します。アローラ&カルサディーラは、1941年から2003年まで米軍とNATO軍によって武器演習場として使われていたビエケス島の不服従運動に参加、軍用地の一部を返還させることに成功しました。彼らの出品するビデオ作品「Returning a Sound」では、返還された土地を走る、ビエケス島の住民が乗るバイクのマフラーにくくり付けられたトランペットから、土地の返還を祝福する音楽が響き渡ります。その音が佐喜眞美術館に充満するとき、私たちはそこに何を感じとることができるでしょうか。

 本展示が、9条と戦後美術というテーマを、地上戦を体験し日本にある米軍基地機能の75%を押しつけられている沖縄県民、そして日本国民、さらに世界の人達と再考する機会となり、来るべき未来への準備の契機となれば、と願います。